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2017.11.19

ビジランテ

新作映画『ビジランテ』、12月9日の公開初日に向けて

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もうすぐ新作『ビジランテ』の公開初日を迎える。
私にとって、『SRサイタマノラッパー』以来のオリジナル脚本による映画化。“自警団=Vigilante”をなんとか映画で描けないかと思い始めたのが20代の半ばだったから、10年越しの企画ということになる。

主演は大森南朋さん、鈴木浩介さん、桐谷健太さん。
その他、ファムファタール的なヒロインに篠田麻里子さん、また若手俳優の吉村界人くんやラッパーの般若さん、石井隆監督作で惹かれた間宮夕貴さん、『ジョーカー・ゲーム』でご一緒した嶋田久作さんなど、個性的かつ魅力的な方々が結集してくれた。数百名のオーディションから選出させていただいた俳優さんも多く出演している。
製作は東映ビデオ、制作プロダクションはスタジオ・ブルーと『百円の恋』チームにお願いした。

地元、埼玉県深谷市での撮影は過酷を極めた。
撮影期間が短かったというのもあるが、埼玉北部の土地は真冬の風(群馬からの赤城おろし)が凄まじい。東北でも撮影をしたことがあるが、雪がある土地の方がむしろ暖かく、北関東の大地はアスファルトから足が冷え、身体中の熱が奪われていく。
私自身、これまで撮った映画の現場の中でもっとも過酷だったし、20年以上映画界にいるベテランのスタッフさんも「今までで一番過酷だ」と呪詛の言葉を吐いた。大森南朋さんや桐谷健太さんも「凶暴な撮影だ」と言っていた。

なんとか完成できたのは、ひとえにスタッフとキャストが脚本の力を信じて、意地でも撮りあげてやると結束してくれたからだと思っている。また地元・深谷の方々の有形無形のバックアップも心強かった。『SRサイタマノラッパー』以来の付き合いの深谷フィルムコミッションの強瀬誠さんは相変わらずの馬力で現場を盛り立ててくれたし、中嶋建設の中嶋社長をはじめ有志の方々は美術や装飾を積極的に手伝ってくれた。劇用車を貸してくださった方、ロケ場所を提供してくれた方、草刈りを手伝ってくれた方、すべての方々の力が映画を完成させてくれた。

完成した『ビジランテ』は決して、わかりやすいエンターテインメントではない。
公開に先駆けて行われた完成披露上映の時、大森南朋さんが舞台挨拶で仰っていたが、「上映後、一人で酒を飲みながら咀嚼するような映画」だと私も思う。
もしかしたら感想を誰かに伝えにくい作品かもしれないと思う。でも、いいじゃないですか、そういう映画がたまにはあっても。
小さな地方都市の、ローカルで、狭いコミュニティに生きる三兄弟の姿から、現在の日本の、世界の問題を投射したい。真っ暗な穴を穿ちわずかな光明が見えるような映画になっていれば幸いだ。 カインとアベルや「カラマーゾフの兄弟」などを想起する方もいるかもしれないし、『SRサイタマノラッパー』との相似形を喚起される方もいるかもしれない。映画評論家の森直人さんが映画秘宝のレビューに書いてくれたように、現在の政治と経済の行き詰まりに想いを馳せる方もいるかもしれない。感想はさまざま多様であってくれた方が映画にとっても、私にとっても幸せだ。
ずっと「映画は映画館で上映されてようやく完成へ向けて歩み始める」と思って映画を作り、宣伝活動もしてきた。
果たして、この『ビジランテ』はどのように育っていくのだろうか。
2007年12月、主演俳優とカメラマンと私だけでクランクインした自主映画『SRサイタマノラッパー』一作目からちょうど10年。

2017年12月9日に『ビジランテ』が劇場公開。
スクリーンが開くのを心待ちにして、胸が高鳴っている。

公式ページ:https://vigilante-movie.com/

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