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2020.05.02

メルマガ

日々の雑感(僕モテメルマガ巻頭エッセイより)

※ このテキストは、入江が毎週発行している
映画メルマガ<僕らのモテるための映画聖典メルマガ>
巻頭エッセイから、一部抜粋して掲載しています。

こんにちは、入江悠です。
4月も最終週になりました。
皆様いかがお過ごしでしょうか?

未曾有の事態に突入しています。
少なくとも、我らが
僕モテメルマガ
にとっては、創刊以来の事態じゃないでしょうか。

この僕モテメルマガは元はいうと、2012年『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』公開にあわせて、
宣伝活動の一環としてはじまったものが、今の映画メルマガに発展しました。
なので、2011年の東日本大震災は経験していません。

当時も、関東や東北を中心に映画館は自粛休業をしましたが、でも今回ほどの規模でありません。
現時点では、日本全国で空いている映画館がほぼない状況。
これがいつまでつづくのか、まったくわからない事態になっています。

個人的に、4月あたまからミニシアター支援の活動をしてきましたが、映画館からの「いつまで休業で経営がもつかわからない」との声は日々強まっています。
そんな声を聞き、届けるために、いくつかのミニシアターへインタビューをしました。

名古屋シネマスコーレ、副支配人の坪井篤史さん


川越スカラ座、飯島千鶴さん


新潟市民映画館シネ・ウインド、支配人の井上経久さん


深谷シネマ、館長の竹石研二さん


すべて、『SRサイタマノラッパー』シリーズ上映でお世話になった映画館であり、
川越スカラ座さんは全国で唯一、僕モテトークイベントも開催してくれた劇場。
それぞれの映画館がおこなっている独自のサービスも紹介しています。

もっともっと、このインタビューは続けていきたいと思いますが、まずは東京の映画館ではなく、各地のミニシアターの声を集めたいと思っています。
というのも、新聞やテレビ、ネットメディアなどは東京に集中しているため、どうしても地方のミニシアターが置き去りにされることが予想されるからです。
個人的にやっているゲリラ作戦だし、Youtubeなので、まずは地方の声を聞きたいと思っています。

映画館に限らず、悲痛な声を聞くのはつらいですが、
それでもこうやって顔が見えると、笑顔もあり、力強い声もあり、励まされます。
文字メディアではこぼれおちてしまう、非言語の情報が伝わってきます。
それが映像の強さだと思います。

話は変わって、これだけ事態が全国化・長期化すると、読者の皆さんも大変だと思います。
いったい生活は大丈夫でしょうか。
また、お仕事はどうでしょうか。
心配です。

わたしは、梅雨くらいに予定していた作品の撮影が怪しくなってきました。
そればかりか、秋頃に予定していた次の作品も危険領域になっています。
ということは今年の仕事がまったくなくなることになり、完全に無職。

同じようなことはフリーランスの方に、往々にして起きることだと思います。
また店舗を持つ自営業の方は、ミニシアターと同じで、固定費がのしかかってきます。
飲食店なども、いつまでも自粛休業していられない、というのが本音でしょう。

考えなければいけないことは多々ありますが、今、目の前にあるのは、これまでわたしたちがほったらかしにしてきたことのツケ、という側面も強いと感じています。
少なくとも、自分のいる映画業界に関しては、そうです。
立場の弱いフリーランスのスタッフにまず荒波が押し寄せ、次に、中小の制作会社や配給会社に波がくる。
一方で、それらスタッフに頼って映画を作ってきたはずの大手映画会社は、弱小の立場の者へ支援の姿勢を示すことは、今のところしていません。

わたしが呼びかけ人をしているSave The Cinemaという活動も、大手映画会社の人やプロデューサーは一人も加わっていません。メジャー映画を撮っている監督で参加しているのも、わたしや白石和彌監督など一握りです。自分だけ生き残れれば良い、という弱肉強食(あるいは新自由主義的)なこれまでの姿勢が、こういう非常時にさらに露骨かつ容赦ない形で、映画業界の多様性を押しつぶそうとしているようです。 大手映画会社の人やプロデューサーは、いったいほんとに日本で、フレデリック・ワイズマンやワン・ビンの映画が観られなくなっても良いと思っているのでしょうか。

また現在、一線で活躍する映画監督の多くは、ほぼ自主映画をミニシアターで上映してもらってデビューしてきた者です。メジャーな映画会社は、後追いでその才能をヒュッとつまんでチャンスを与えるわけですが、才能の供給源たるミニシアターやインディペンデント映画界について、何も考えないのでしょうか。

非常に疑問で、腹立たしく感じていますが、おそらく、こういういびつな構図は他の業界でもあるはずです。
ひとつだけ、今の時点でわたしが確信を持っているのは、
「もう、これまでのあり方ではダメだな」
ということです。
なんとなく、まあ当分は大丈夫か、と思っていたことが、もう大丈夫じゃない。
腐ったものは捨てて変えなきゃいけないし、声をあげなきゃいけない。
マズイところは今、変えないと、ほんとに大変なことになるはずです。
というか、生活という意味では、すでに多くの人が大変なことになっています。

考えなければいけないことは、まだまだたくさんありますが、今回はこのへんで。
最後にポジティブなことを。

ずっとステイ・ホーム状態なのと、仕事が次々に吹っ飛びそうなので、ひとつ個人的な目標を決めました。ミニシアター支援やフリーランス支援などは継続してやっていきますが、自分のためだけの、無駄に月日を浪費しないための、目標です。

それは、「高い山に登る」こと。

せっかく時間だけはあるので、これまで後回しにしてきた「高い山」へ挑戦です。
たとえば、忙しいときに放置していたアッバス・キアロスタミのDVD-BOX。
あるいは、トルストイやチェーホフの本。
苦手意識を持っていた経済関係の本(『資本論』とか)や、分厚い評論、評伝など。
最近ずっとミステリーを読んできたので、オールタイムベストに挙げられることも多い、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』にも挑戦したいと思います。
分厚い上下巻なんだ、これが。

コロナ禍が去ったときに、せめて自分の中だけでも、「これは登った」やり遂げた感が欲しい。
あと、シソとかも育ててみたい。
というわけで、今週もまたみんな映画館にいけないので、異例の特集ぶっ続け。
どうやって、ステイホームしてればいいの?
という疑問にお答えすべく、「室内劇特集」でお送りします。
それじゃあ、今週もはじまりはじまり~。