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2019.04.16

AI崩壊

新作映画『AI崩壊』編集中/AI参考文献リスト

thum

※ このテキストは、入江が毎週発行している映画メルマガ<僕らのモテるための映画聖典メルマガ>巻頭エッセイから、一部抜粋して掲載しています


こんにちは、入江悠です。
新作映画『AI崩壊』の撮影が終わって、編集が続いております。
とんでもないVFXのボリュームになっていて、これからCGがどう上がってくるか、ドキドキしています。

そんな中、新しい脚本も書いています。
ここ数年は、脚本を書くときは関連する書籍をできるだけ読もうと思って、手当たり次第に収集しているのですが、困るのが本棚。
『ギャングース』執筆時は30冊くらい、『AI崩壊』執筆時も50冊以上(と無数の雑誌とWeb)を読みましたが、今書いているものは、それを遥かに超えそうです。
これ、どうしたらいいんでしょう。
小説家や脚本家の人たちはいったいどうしてるんでしょう。

年をとってだんだん物覚えも悪くなってきているので、読んだ本はすぐに取り出せるところに置いておかないと、「あれ? あの話って何で読んだっけ?」と思い出せなくなってきて、脳の中の検索性が衰えています。
本来なら、読んだ内容の要約や感想を(このメルマガみたいに)書いて、まとめておけばいいんですが、さすがに時間的にそうもいかない。

というわけで、『AI崩壊』の脚本執筆時に読んだ本を要約とともにまとめておきたいと思います。
どれもこれも現在、話題のAI本といえます。

(1)「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」(松尾豊)
おそらく今、日本で最も有名で顔が知られている人工知能研究者の単著。
東大准教授・松尾さんの文章は読みやすく、知りたいところに手が届く。

(2)「図解 人工知能大全」(古明地正俊・長谷佳明)
図や写真が多用されているので素人にも入り込みやすく、AIの歴史も追える。
後半はCNN、RNNなど専門的用語の解説もあり、網羅的に知りたい人にベストの1冊。

(3)「人工知能のための哲学塾」(三宅陽一郎)
ゲームAI開発者として著書も多数の三宅陽一郎氏による話題の書。
フッサール、デカルト、デリダなどを参照し、哲学とAIの絡みを解く。

(4)「AI言論 神の支配と人間」(西垣通)
AIとシンギュラリティ信仰が実は西欧の一神教的思考に支えられていることを明かす。
西垣教授のカルチャースクールにも講義を聴きにいきましたが、哲学と接近して面白い。

(5)「AIと人類は共存できるか? 人工知能SFアンソロジー」(人工知能学会)
これはちょっと変わり種。小説家とAI研究者のコラボによる短編小説オムニバス。
物語からAIのさまざまなテーマに入っていけるので、お子さんでも楽しめるはず。

(6)「誤解だらけの人工知能 ディープラーニングの限界と可能性」(田中潤、松本健太郎)
現在のAI研究のブレイクスルーのひとつ、ディープラーニングを丁寧に解説。
これからのAIが社会をどう変えていくかも平易な言葉で推測しています。

(7)「AIが人間を殺す日 車、医療、兵器に組み込まれる人工知能」(小林雅一)
自動運転車の技術と事故などのショッキングな内容から解き明かす人工知能技術の危険性。
けっきょく使う人間の問題は免責されない、じゃあどうするか。

(8)「量子コンピューターが人工知能を加速する」(西森秀稔、大関真之)
実際に量子コンピューターの開発に携わる研究者による著書。
D-Waveという実在のマシンなどの解説のほか、量子論に詳しい。

(9)「超AI時代の生存戦略 シンギュラリティに備える34のリスト」(落合陽一)
メディアアーティストや論客とも知られる新世代の旗手、落合陽一。
面白い発言や新世代っぽい見識に驚くけど、本著はどちらかというと自己啓発本寄り。

(10)「AI VS. 教科書が読めない子供たち」(新井紀子)
この本がAI関連本では一番面白くて刺激的だった、といえるかもしれない。
子供を持つすべての親御さん、自分が勉強を続けるすべての人たち、必読の本。

(11)「シンギュラリティは近い 人類が生命を超越するとき」(レイ・カーツワイル)
きました、シンギュラリティ(技術的特異点)という言葉を広めた伝説的な生みの親。
トンデモ発明家かと思ったら、Googleの技術責任者に就任したりして興味が尽きない方。

(12)「シンキング・マシン 人工知能の脅威」(ルーク・ドーメル)
スマートデバイスや生体認証など、私たちはIoTからもう逃れられない。
さまざまな観点からAIに囲まれつつある人類の社会を分析する。

(13)「そろそろ人工知能の真実を話そう」(ジョン=ガブリエル・ガナシア)
パリ第6大学コンピューターサイエンス教授にして哲学者の著書。
レイ・カーツワイルのシンギュラリティ理論などを批判的に考察する。

(14)「スーパーインテリジェンス 超絶AIと人類の命運」(ニック・ボストロム)
「ああ、こういう人が天才なのかも」と思ってしまうとてつもない知識量と分析量。
700ページの厚みなので骨が折れるけど、読み終えたときの達成感はすごい。

以上。
ということで、厳選してピックアップしてご紹介しましたが、これ以外にもたくさんあります。
サイバー論やセキュリティ論、テクノロジー論などに守備範囲を広げると、もっともっと(それこそ指数関数的に)興味深い本が増えていきます。

私自身、すでに脚本は書き上がって、『AI崩壊』の撮影は終わっているとはいえ、編集しながら横目でAIの進化や変遷を追いつつ、何か動向に変化や発展があったら生かさなければなりません。
テロップや会話などを軌道修正する必要も、あるいはあるかもしれません。
さらに人工知能の勉強を進めていくと、行き着くのは哲学や認知科学の領域だったりします。(実在論や認識論、記号接地問題、「中国の部屋」問題など)。 また『サピエンス全史』のような文明論、生物論だったりもします。
そうなると、デカルトやフロイトなどにも戻らざるを得なくなり、プラトンやアリストテレスなどの時代から今を俯瞰する必要も出てきそうです。
うん、面白い。
好奇心さえ失わなければ、勉強の翼はどこまでも広がっていきます。
せっかく人工知能の新たな展望の時代に生きているのだから、できるだけこの翼に乗って、遠くまで見てみたいな、と思います。

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